日本映画専門チャンネルで『東北の神武たち』という映画を観ました。
1957年に制作された凄く古い白黒映画。
観ていると、もう亡くなられた女優さん男優さんたちが出てこられ懐かしくなりました。
この映画は何が言いたいだろうと最初はよくわかりませんでしたが、観ているうちにじわじわと分かってきました。
山に囲まれた東北の貧しい村、耕地面積が少ないこの村では家長となる長男より下の子供を養う余裕がない。
その為、家に残った下の子供は長男の為に死ぬまで無償で働かなくてはならない。
将来は兄の為に働くものだと教えこまれるようになる。
親たちも長男以外はこのように育てるのが当然だと考えていたので、別にかわいそうだと思う事もなかったらしい。
次男三男は、ボロを着せられ嫁ももらえず髪も髭も剃る事を禁じられ、伸びほうだいなので神武天皇を思わせるからズンムと呼ばれていたらしい。
長男以外の人間は結婚もできず、世間との交流すら許されず、死ぬまで家のために奴隷のごとく働かされる・・・
今この内容を読んでいる方は、一体いつの時代のどこの国の話だと思われているかもしれませんね。
しかしこれは、日本に20世紀まで実在した東北地方の風習らしいのです。
家庭内での地位は家主の妻子よりも下で、自分の甥っこや姪っこからも下男として扱われる。
戸籍には、「厄介」とだけ記され、他家に嫁ぐか婿養子にでない限り結婚も禁じられました。
そのほとんどが一生、童貞・処女のままだと推測される。
将来の夢どころか趣味ももたず、ただただ家のために働いて一生を終わる。
村を出るということは非常に悪いことで家の掟に背くことだ、という考えがあったため村を出るものはほとんだなく、たまにでる者がいても人付き合いがうまくできず、すぐに戻ってきたそうです。
この時代、村を持続するためにとった措置であったと思うけれど、もっと他に方法があったのではないかいと思う。
戸籍に厄介と記するのであれば子供を作らなければよいと感じました。
とても悲しくむなしい映画だった。